「春」を愛でる美人たち
桜のつぼみも膨らんで春の訪れを告げていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
「培広庵コレクション 華麗なる美人画」展を開催して約1ヶ月、
おかげさまでご好評を頂いています。ありがとうございます。
今展覧会期間中は、自由にご参加いただけるギャラリートーク・ツアーを全3回開催しています。
既に2月27日(土)、3月5日(土)は終了しまして、学芸員による作品の解説に始終熱心に耳を傾けてくださいました。
明日3月19日(土)も開催しますので、是非皆様のご参加をお待ちしております。
今回は、美人画の見どころの1つである「日本の四季」、
特に「春」にスポットライトを当ててご紹介したいと思います。
展観中の作品総計70件85点のうち「春」をテーマにした作品は26点になります。
はじめに、「春」への思いを表現する繊細な言葉(作品タイトル)の数々に驚かされます。
「若菜摘み」、「浅春」、「行く春」、「桜美人」、「桜狩の図」、「花簪の女」、「春宵」、
「送春図」、「惜春」― 歳時記に従って羅列してみると、初春から仲春、晩春にかけての情景が目に浮かぶようです。
作品に向き合うと、梅、桜、蒲公英(たんぽぽ)、若菜、柳の芽吹き、山吹など春を象徴する植物の描写はもとより、描かれている女人の衣装の中にも季節を見つけることが出来ます。
例えば、木村斯光の「浅春」(昭和十年代)で気品のある美人が身につけている衣装には芽吹く柳と梅の花が、上村松園の「桜狩りの図」(昭和十年)では、令嬢の五つ紋振袖の晴れ着に満開の桜が描かれています。谷角日娑春の「送春図」(昭和五年)での、端麗な美人が纏っている淡い萌木色に統一した衣装は、春先の新緑のようでもありながら涼感を出していて、夏の到来を感じさせます。そして春を惜しむように、帯には満開の桜が描かれています。
季節、言葉、衣装などさまざまな観点と共に、ぜひ直接作品と向き合って華やかな美人画の愉しみを味わって頂けましたら幸いです。
皆様のお越しをお待ちしております。