

日付:
2008年06月10日(火)
葛飾北斎(1760-1849)の「凱風快晴」「神奈川沖浪裏」などのタイトルは知らなくても、雄大な赤富士や、逆巻く大波の画像を印象深く覚えている人は多いことでしょう。これらの作品が含まれた「冨嶽三十六景」シリーズは、風景版画というジャンルを役者絵、美人画と同じ位置に高め、北斎の名を不動のものにしました。北斎の富士山に取り組む意欲は、「冨嶽三十六景」では収まりきれず、のちに天保5(1834)年より『富嶽百景』(全3冊)を上梓しました。
本展は、北斎の二大富士シリーズ「冨嶽三十六景」と『富嶽百景』を同時に紹介するものです。「冨嶽三十六景」は全46図に、同図ながら彩色が異なる4図を加えた50点、『富嶽百景』は図版を一点ずつ額装した全102点に、極めて早い時期に摺られた原本3冊の合計155点を展示します。北斎にとって富士とは何であったのかを探るとともに、北斎芸術の新たな魅力を再確認することができることでしょう。
◆主 催:財団法人 佐川美術館、NHK大津放送局、 プラネット近畿
◆企画協力: プロモーション
◆後 援:滋賀県、滋賀県教育委員会、守山市、守山市教育委員会、読売新聞大阪本社、大津放送局、KBS京都、エフエム京都、エフエム滋賀
◆協 力:佐川急便株式会社、佐川印刷株式会社
冨嶽三十六景 《神奈川沖浪裏》
題名に神奈川沖とあるが、木更津寄りの海から見た景色という説もある。快速を誇る押送船が逆巻く大波に翻弄され、船乗りは身動きできず船のへりにしがみついている。水しぶきをあげながら生き物の爪のように襲いかかる波頭と、小さく描かれた富士。人と自然、動と静の要素が対比されて、いっそう富士の存在感を高めている。
冨嶽三十六景 《凱風快晴》
凱風とは南風のこと。晴れ渡った空に白雲、赤い山肌の富士を描いたこの作品は、通称「赤富士」と呼ばれる。ちなみに赤富士は夏の季語。太陽を受けて、山肌の溶岩大地が暗赤色に染まる現象で、夏の日の早朝などに見ることができる。北斎がどこからの富士を描いたか特定できないが、画中に人物を一人も配さずに、富士の姿のみを描いた、風景画の傑作である。
富嶽百景 初編 《田面の不二》
水を張った田圃の水面に写る大きく聳える富士が鏡のように映し出されている。富士の輪郭線は細く引かれ、飛び立った二羽の雁の姿を、水面に映る富士に浮かび上がらせている。畦道に休む雁十羽に先を急ぐようにせかしているようにも見える。
左 富嶽百景 二編 《井戸浚の不二》
水を汲み上げる桶を滑車で引き上げるために組まれた梯子や丸太などが詳細に描かれ、綱の三角形の中に富士を配するという構図が面白い。
右 富嶽百景 二編 《窓中の不二》
円窓に富士が正面に見えるように配され、手前に松の枝が、中景には雁の群れが飛んでいる。人物を太い緩やかな線で描写することで、視線は人物、松、雁、富士と流れていく。