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展覧会

佐藤忠良 美 ━女性をモデルに━
終了

2015年04月03日(金)~2015年06月14日(日)

佐藤忠良氏の80年に亘る創作活動を通観すると、1950年代の''きたなづくり''と言われた頭像作品や1960年代の''小児科''と呼ばれたこども像作品、1970年代の''帽子シリーズ''に代表される女性像作品などがあります。その中でも女性をモデルにした作品というのは、佐藤作品の中でも大半を占めており、佐藤氏の制作を語る上では欠くことのできないテーマです。

《帽子・夏》 1972年 ブロンズ佐藤氏の作る女性像は、大きなポーズをとらないこと、時代の風俗を取り入れるところを特徴として挙げる事ができ、佐藤氏の代表作《帽子・夏》は好例といえます。この作品は彫刻家・笹戸千津子氏をモデルにしたもので、彼女が持っていたつぶれた帽子を被せ、下半身には当時の若者の中で流行していたパンタロン(ベルボトム)を穿かせて制作した作品です。造形の世界では、1つの像の中に「出る力」(作用)と「引く力」(反作用)のバランスを表現しなければならないと考えていた佐藤氏は、この作品の中に巧みなバランス感覚を示しています。モデルに穿かせたパンタロンの裾を切ることで下半身の重量感を減らすとともに、肩を落として帽子との空間をとることによって全体的にリラックスを与えながらも、爪先を軽く立たせることで作品に緊張感を生み出しています。「作用」と「反作用」を上手く使うことで緊張と緩和を表現し、見る側を惹きこむ作品です。この作品は第36回新制作展に出品され、当館の他には東京国立近代美術館にも収蔵されています。

今回の展示では、《帽子・夏》をはじめとする女性像の作品を中心に展示いたします。女性像からは、「作用」と「反作用」のバランスの中に、佐藤氏の求めた彫刻美を見ることができるはずです。是非ご覧ください。