佐藤忠良 触ることから始めよう
2015年11月28日(土)~2016年04月10日(日)
人間の五感のうちの一つである「触覚」は、他の「視覚」「聴覚」「臭覚」「味覚」とは少し性質が異なるものです。「触覚」以外の四感は首から上に全て感覚器があり、情報を受動的に受け取る性質を持つのに対し、「触覚」は身体全体が感覚器で、自ら身体を動かすことで情報を受け取る性質があります。この能動的な側面を持つ「触覚」は身体を使う経験の増加に比例して養われていくものだと言えます。しかし、昨今の文明の発達化により、機械が私達の生活の一部としての地位を占めるようになってから、人間は明らかに物に触れるという経験の減少、すなわち「触覚を養う」ことが衰退しつつあると、佐藤忠良氏は警鐘を鳴らしたのでした。
これは佐藤氏の著書『触ることから始めよう』(講談社刊、1997年)で述べられており、彫刻家ならではの観点から、子ども達を取り巻く教育の在り方について一石を投じた内容の一冊となっています。
通常、美術館では作品保護の観点から、作品に触ることができませんが、彫刻は触覚の芸術であると考えていた佐藤氏は、実際に触れて作品鑑賞をして欲しいと考えていました。
当館での佐藤氏のブロンズ作品は直接触れての鑑賞ができるのも、この佐藤氏の思い所以です。
この度の展覧会では、「触る」という観点から、皆様に作品をご覧いただきたく思います。ご自身の手で作品をお確かめいただいた時に何か新たな気づきがあれば、佐藤氏の「触覚」に対する思いが後世にも届いている、ということになるのではないでしょうか。
佐藤氏の教育関連書籍もあわせて展示をいたしております。
下の画像上段右から3番目が『触ることから始めよう』です。