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展覧会

佐藤忠良 まとう彫刻
終了

2019年04月06日(土)~2019年06月30日(日)

人間は衣服を身に着けて生活しています。着衣する行為は人間以外の動物にはない概念ですが、その意味合いは、気温変化や外的刺激への対応といった実用性と、自分がどういう人物であるのか特徴の表現といった社会性・装飾性の面に分けることができます。特に後者においては、近年多様化する社会の在り方の中で、ありとあらゆる表現方法が認められ、衣服は現代社会に不可欠な自己表現のためのツールだといえるでしょう。

佐藤忠良は70年以上に亘る制作活動の中で、着衣した像を多数発表しました。帽子、ブラウス、ブーツといった時代の風俗を彫刻の中に取り入れた佐藤は、中でもジーンズをモチーフにした像を数多く制作します。終戦後、アメリカから中古衣料として持ち込まれたジーンズは、1970年代のヒッピーブームと相まって、高度経済成長の中で市民権を獲得した比較的新しい衣服のジャンルになります。佐藤は、ジーンズの硬い生地と肉体が織り成すしわの起伏がまるで呼吸しているように思い、それ以来ジーンズ姿の彫刻を20点ほど制作しました。このように時代の風俗を積極的に取り入れた佐藤は、過度な表現になりすぎないよう試行錯誤して制作したといいます。流行を作品に取り入れるとそこに目がいきやすく、単なる風俗彫刻に陥りやすいので、佐藤は全体のバランスを見ながら塑像()(粘土で制作する像)に足し算・引き算を施し、何度も考え、やり直しを繰り返して理想の形にしていきました。