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展覧会

佐藤忠良 モデルたちとの歩み
終了

2020年10月24日(土)~2021年03月21日(日)

作家が人体を制作する際、モデルという存在は必要不可欠です。彫刻家の佐藤忠良は、身近な人達をモデルに様々な女性像や子ども像を制作しました。

佐藤が教鞭をとった東京造形大学での教え子・笹戸千津子は、弟子として指導を受ける傍ら、佐藤が1970年代以降に制作した多くの女性像のモデルを務めました。笹戸がモデルを務めた中で、ジーパンや帽子等のコスチュームを身につけた着衣像では、流行の風俗を巧みに取り入れたことが特徴です。そして、笹戸をモデルにしたこれらの作品は、しなやかな姿態で簡潔なフォルムでつくられながらも、女性の内なる清新さが現れ、佐藤芸術の新しい作風になりました。中でも《帽子・夏》は佐藤の代表作になり、笹戸は佐藤の作家人生に転機をもたらした存在といえます。

また佐藤が女性像と並行して多く制作したのは、自身の子どもや孫、友人の娘などをモデルにした子ども像でした。佐藤は成長を楽しむかのように、子ども像のタイトルに彼らの当時の年齢や学年をつけています。無邪気な表情と純朴な動作で表現され、日々子どもたちの行く末を見守る佐藤の姿勢がうかがえます。美術教科書の編集執筆や絵本の挿絵を描く等、教育者としての側面も持ち、作品に瑞々しい生命感と、温かな人間性が感じられるのは、彼らの未来に心を配する、佐藤の愛情が投影されているためかもしれません。

身近な人々をモデルにした佐藤の作品には、彼らを思いやる温かな気持ちと、佐藤がこれまで彼らと過ごしてきた年月の積み重ねが感じられます。土をいじる佐藤の手によって作品に刻み込まれた、モデルたちとの深い絆の記録を、女性像と子ども像を通してご覧ください。



《帽子・夏》 (1972)
















二歳(小) (1972)