茶室を囲む植物~ヨシ~ | 佐川美術館

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茶室を囲む植物~ヨシ~

佐川美術館の茶室は水庭に浮かんでいるように見え、ヨシとヒメガマに囲われているのが印象的ですが、1年にある時期だけ、ヨシとヒメガマが姿を消してしまうのをみなさんご存知でしょうか。

それが、春先のこの季節です。

 

ヨシ刈り取り後の茶室

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうですか?普段はヨシ原の中に佇む茶室も、ご覧の通り。佐川美術館に来た事のある方なら、ギャップに驚く方もいるかもしれませんね。

何故ヨシがないのかというと、わざと刈り取ったからです。ヨシは地下茎で育つ植物。通常、春に芽吹き、夏に2m以上の高さまで成長し、秋に色づき、冬に枯れます。枯れたヨシは抜け殻的な部分で、刈り取ってもヨシ自体の生体には影響がなく、むしろ刈り取る方がヨシにはいいそうです。枯れたヨシが残らないことで、新しく芽吹いたヨシが立派に育つというわけですね。美術館の美しい風景を維持するためには、必要なことなのです。

 

佐川美術館のある滋賀県・琵琶湖周辺ではこのヨシの群落があり、群生している様子は、琵琶湖の美しい原風景として私達の心を安らげてくれます。

このヨシ、美しい風景以外にも役割がたくさんあります。一つ目は水質をきれいにすること。ヨシ自体に浄化作用があり、水中のリンや窒素を吸収してくれます。リンや窒素が水中に多くなると、水が富栄養化され、アオコ発生の原因になるのです。アオコは悪臭だけでなく、魚などの水中生物が酸素欠乏によって死んでしまいます。ヨシは、その被害から守ってくれているのです。

二つ目は、魚や鳥のすみかになっていること。琵琶湖固有種のニゴロブナをはじめ、たくさんの魚がヨシ群落内に卵を産み付け、そこで育ちます。カイツブリやカルガモをはじめ、多くの野鳥がそこで卵を産み、育てるのです。琵琶湖に住むいきものにとって欠かせない植物、それがヨシなのです。

 

また、ヨシは葦簀(よしず)やヨシ紙の材料として使用され、枯れて伐採した後も利用価値があります。

 

ヨシを原料にすいた紙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春先の植物の成長は早く、美術館ではあと1ヶ月もすれば茶室を囲むように、芽吹いたヨシの緑色のじゅうたんをご覧いただくことができると思います。

ヨシとヒメガマの成長を感じながら、美術館でのひと時をお過ごしいただければ幸いです。