佐藤忠良 ねがい -未来へ-
2014年11月26日(水)~2015年03月29日(日)
芸術は人生の必要無駄
これは、佐藤忠良氏が残した言葉です。
佐藤氏は作家としての創作活動の他に、図工・美術教科書の編纂という教育者としての一面を持っており、自身が携った教科書の中に、『芸術は人生の必要無駄』について述べた文章があるのでご紹介します。
私たちの生活の中には、好きだとか嫌いだとか、美しいとかみにくいとか、ものに対して《感ずる心》があります。この《感ずる心》というのは、みなそれぞれに違い、生きていく上で必要不可欠なものだと佐藤氏は考えています。芸術というのは、そうした心が生み出したものだといえます。
しかし、芸術そのものには日常生活の環境を変えることはできません。それは一見、直接役に立たない無駄なものだと捉えられるかもしれませんが、佐藤氏はこれについて次のように述べています。
「この直接役に立たないものが、心のビタミンのようなもので、しらずしらずのうちに、私たちの心のなかで蓄積されて、感ずる心を育てるのです。」【註】
芸術にたくさん触れてほしい、子どもたちに《感ずる心》を持ってほしい、そういった佐藤氏のねがいが『芸術は人生の必要無駄』という言葉の中に込められているのです。
現在、佐藤忠良館では3月29日(日)まで「ねがい‐未来へ‐」をテーマに、子ども像を中心に展示しています。佐藤氏が子どもたちへ願った思いを、作品を通して見つめていただければ幸いです。
【註】『少年の美術1』(現代美術社)より一部抜粋