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展覧会

佐藤忠良 子どもたちへ
終了

2016年12月06日(火)~2017年03月26日(日)

佐藤忠良氏の作品は、"首狩り"と称された頭像や、帽子の女性をモチーフにした作品が有名ですが、1960~70年代に代表される子ども像も佐藤氏の仕事を振り返る上で欠かすことはできません。子ども像のモデルとなったのは佐藤氏の身近な人物たちで、自身の孫である「竜」と「未菜」や、盟友・朝倉摂氏(舞台美術家、画家)の子どもである「亜古」(女優・富沢亜古氏)を中心に様々な子ども像が制作されました。子どもをモチーフにした作品は、新制作展をはじめ、数多くの展覧会に出品され、佐藤芸術を代表する作風の一つとして、世間に広まっていきます。次々と子ども像を手がける佐藤氏の姿は、人々に"小児科の忠さん"と喩えられるほどでした。

佐藤氏の作品は、展覧会用に制作されたものが多くを占めますが、この彫刻家の仕事はそればかりとは限りません。自主的に制作した展覧会出品作とは違い、依頼者から受注を受けて制作した作品も数多くあります。こうした作品をコミッション・ワークと呼び、佐藤氏の場合、メダルやトロフィー、名士の肖像、野外彫刻を挙げることができます。コミッション・ワークの目的によって作品のモチーフはそれぞれ変わりますが、中でもメダルやトロフィーには、子どもをモチーフとしたものをよく目にします。それらの作品で表現されている子どもたちは、元気なポーズをとったものや、未来を見据えるかのように空へとまなざしを向けているものが多く、私たちに作品を通して希望を語りかけてくるようです。このような子どもの姿を、佐藤氏は希望の象徴として、メダルやトロフィーといった記念品に多用したのかもしれません。

コミッション・ワークは、彫刻と社会とをつなぐ接点であり、彫刻が私たちの暮らしに密接に関わり続けるために必要なもの、そのように考えていた佐藤氏の思いが、小さな作品から伝わってきます。