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展覧会

吉左衞門X 70年世代の今
終了

2017年09月15日(金)~2018年03月11日(日)

展覧会イメージ

 

第8回目となる吉左衞門Xでは、戦後の混乱と再生を背負って生まれてきた世代、その時代の風を受けながら、現在も制作活動を続けている14名の作家たちの今を展観いたします。

まさに団塊の世代、彼らが青春を過ごした1960年代末から70年に架かる時代は、高度経済成長により立ち直った戦後日本社会の大きな転換期でした。様々な矛盾を背負い、価値観が怒濤のように変化してゆく時代は、それぞれの若者に深い影響を与えました。時代を画す様々な社会現象を生み出した1970年代。安保闘争、ヴェトナム戦争、学生運動、三島事件、連合赤軍あさま山荘事件、ヒッピー、アレン・ギンズバーグ、ビート・ジェネレーションの詩人たち、ボブ・ディラン、マイルスデイヴィス、JAZZ喫茶PIT INN、ゴダール、トリュフォー、アラン・レネ、パゾリーニ、ヌーヴェルヴァーグ、レヴィ=ストロース、ソシュール、ラカンからフーコー、デリダ、ドゥルーズの構造主義、土方巽の舞踏、唐十郎の状況劇場、寺山修司の天井桟敷、武満徹をはじめとする現代音楽、新しいアメリカ美術、具体からもの派など。これほどの多様な価値観やイデアが激しくぶつかり合った時代があったでしょうか。

その時代の多様性を表すように、かつて同じ学舎で彫刻を学んだ作家たちは、様々な道を歩んで行きます。

 

河原美比古は、九州産業大学教授を務め、木彫を専門に新制作協会に所属。一級建築士事務所Lentement主宰し、建築、木工家具デザインなど幅広い活動を行い、今日に至る。

 

國松明日香は、郷里札幌を基点に、版画制作、金属による抽象彫刻など幅広い創作活動を展開、今日に至る。

 

久保制一は、テラコッタ・ブロンズ・木などを素材にした作品発表を開始。青山学院女子短期大学教授を務め、新制作協会に所属。第79回新制作展委員長を経て、今日に至る。 

 

熊瀬紀子(旧姓・澤村紀子)は、ガラス工芸、インスタレーション、オブジェなど、主にガラスによる作品を発表。BIWAKOビエンナーレにも毎回参加,幅広い活動を行い、今日に至る。

 

坂倉新兵衛、本名坂倉正治は、日本工芸会に所属。父14代新兵衛の他界により長門市深川湯本に戻り15代新兵衛を継承し作陶(萩焼)を始め、今日に至る。

 

土屋豊は、在学中から金属の鍛金作品を発表。工房を主宰。金属を主素材として、モニュメント、肖像彫刻、インテリア家具など、幅広い制作活動を行い、今日に至る。

 

鶴見修作は、東京藝術大学の助手を務め、自然石(流石)のかたちから生まれた作品を発表し続け、今日に至る。

 

登坂秀雄は、静岡大学の教授を務め、二科会に所属。石彫による抽象作品を中心に、野外モニュメント制作、インスタレーションを含め幅広く作品を発表し、今日に至る。

 

とさかますみ(旧姓・成瀬真澄)は、一陽会に所属。木彫による人物像(子供像)を中心に作品を発表、一方歌人としても活動、絵本なども制作発表し、今日に至る。

 

日原康は、主に立体作品の発表を続ける傍ら、平面の作品も多く手掛ける。近年は、立体と平面作品の組み合わせにより生まれる新鮮な空間に魅力を感じ、作品制作を続け、今日に至る。

 

本田悦久は、地元の公立高校で美術教師を勤めた後、青山学院女子短期大学・共立女子大学の非常勤講師を勤める。人体の塑造制作を中心に、新制作協会に所蔵し作家活動を続け、今日に至る。

 

前田精史は、様々な媒体によるコンセプチュアルアート、場との関係を主題にしたインスタレーションを中心に、個展およびグループ展などで旺盛に作品を発表し、今日に至る。

 

吉江庄蔵は、法政大学建築学科非常勤講師を務め、土方巽の率いる舞踏にかかわり、プラスチックによる皮膜彫刻を発表、「舞台美術」「展示構成」「プロダクトデザイン」「パブリック彫刻」などの幅広い活動を行い、今日に至る。

 

樂吉左衞門、旧姓樂光博は、70年に大学を留年、一年遅れて卒業後ローマに留学、西洋体験を踏まえ75年に帰国、作陶を始め、その後父覚入の他界により15代吉左衞門を襲名し、今日に至る。

 

以上14名の作品を通じ、自立への道、社会と向かい合った個の精神に、時代がどのような痕跡を残したのかをご覧いただきます。