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展覧会

百花繚乱 浮世絵十人絵師展
終了

2017年09月30日(土)~2017年11月26日(日)

日本が世界に誇る芸術作品といえば「浮世絵」。ゴッホやモネといった名立たる画家たちに影響を与え、現代においても国内外で高く評価されている浮世絵は、江戸の生活や流行の風俗をはじめ、人気の役者や名所旧跡を描き多くの人に親しまれています。

 

本展では、錦絵が誕生した江戸時代中期から爛熟の黄金期を経て、幕末の隆盛期までの全時代に焦点を当て、江戸文化の象徴として時代を牽引してきた人気の浮世絵師十人を紹介します。

 

錦絵創始期の第一人者で、ロマンチックな女性像で知られた鈴木春信をはじめ、清楚な八頭身美人像を描いた鳥居清長。ベラスケスやレンブラントとともに世界三大肖像画家と讃えられた東洲斎写楽。美人画の神様とまでいわれた喜多川歌麿。赤富士や波富士で新たな風景画を確立した葛飾北斎。情緒的な風景画を描き、ゴッホを魅了した歌川広重。これら六大巨匠に加えて、あらゆるジャンルで人気浮世絵師を輩出した歌川派の総帥で一門の隆盛に生涯をかけた初代・歌川豊国。その門人で役者絵や美人画に長け、三代豊国を襲名した歌川国貞。パワフルな武者絵やユニークな妖怪画で大衆を魅了した歌川国芳。そして、武士でありながら遊女の情念を追及し、妖艶な美人画を描いた溪斎英泉ら、多彩な天才浮世絵師をクローズアップして、浮世絵の真髄と醍醐味に迫ります。

 

■十人の浮世絵師 

鈴木春信 (すずきはるのぶ) (1725-1770) 

浮世絵版画における「錦絵」技法の大成者。「錦絵」は本格的な多色摺の木版画を意味します。

謡曲の「井筒」など古典文学を当時の江戸の風俗に置き換える"見立て"の手法を用いて、清楚で可憐な女性像を数多く手がけました。

本展では江戸の町で随一の美人と言われた《笠森お仙》を含む作品10点を紹介。

 

鳥居清長 (とりいきよなが) (1752-1815)

役者絵の名門とされた鳥居派の中興の祖で、美人画健康的で爽やかな美人画で知られています。当時の日本人の実体からかけ離れた八頭身のプロポーションを持つ「江戸のヴィーナス」と讃えられる

美人画作品《亀戸の藤見》を含む12点の作品を紹介。

 

東洲斎写楽 (とうしゅうさいしゃらく) (生没年不詳)

その出自から謎多き浮世絵師で、近年阿波徳島藩お抱え能楽師とする説も注目されています。

人物の上半身や顔を強調して描く「大首絵」で人気を博し、写楽自身の印象による誇張を加味した人物の表情が特徴的です。本展では、《二代目嵐龍蔵の金貸石部金吉》など「大首絵」の名品を中心に11点の作品を紹介。

展示風景①

 

 

喜多川歌麿 (きたがわ うたまろ) (1753-1806)

鈴木春信、鳥居清長に続く三大美人画家の一人。浮世絵美人画の黄金期を築き上げた絵師として知られています。

「大首絵」の手法により、遊女など当時の女性の内面までを見事に表現しました。本展では《美人十容有徳人の女房》や江戸時代の教訓画の代表作《教訓親の目鑑》を含む14点の作品を紹介。

展示風景②

 

 

葛飾北斎 (かつしかほくさい) (1760-1849)

自らを「画狂人」と称し、生涯にわたり3万点以上の作品を描いた北斎は代表作《冨嶽三十六景》をはじめ、数多くの浮世絵風景画を手がけました。またその没後、『北斎漫画』をはじめとする作品が海外へ輸出され、ゴッホやモネなど西洋の印象派の芸術家達に影響を与えました。本展では、北斎直筆の肉筆浮世絵2点を含む22点を紹介。

展示風景③

 

 

歌川豊国 (うたがわとよくに) (1769-1825)

歌川派の創始者・歌川豊春の元で学び、役者絵における人気絵師の地位を確立して、同時期に活躍した写楽と共に浮世絵の人気を牽引し、後に歌川派の総帥の座につきます。

本展では、日本の美しい景物になぞらえた美人画三部作《三美人・雪月花》の他、豊国直筆の肉筆浮世絵1点を含む17点を紹介。

 

歌川国貞(うたがわ くにさだ) (1786-1864)

歌川豊国の門人で、後に三代豊国を襲名します。早くから役者絵において才能を開花させ、粋で華やかな模様や色彩を施す美人画でその名を高めました。

面長猪首型の美人画を描くことで知られています。本展では、人気歌舞伎役者を描いた《大当狂言之内菅丞相》の他、国貞直筆の肉筆浮世絵2点を含む20点を紹介。

 

 

歌川国芳(うたがわ くによし) (1797-1861)

パワー溢れる武者絵、ユーモアに富んだ戯画によって、幕末社会の閉塞感を打ち破りました。

武者絵の傑作《通俗水滸伝豪傑百八人之一個》や奇想天外な発想力で描かれた迫力あふれる《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》、そして直筆の肉筆浮世絵1点を含む21点を紹介。

展示風景④

 

 

溪斎英泉(けいさい えいせん) (1791-1848)

独特な妖艶さのある美人画で人気を博します。

退廃美の極致といわれる画風は、くねらせた腰や突き出す顎など斜に構えたポーズの取り方に特徴があり、

また釣り上がった眼の表現も印象的です。本展では、《浮世風俗美女競》の他、英泉直筆の肉筆浮世絵2点を含む20点を紹介。

 

歌川広重 (うたがわひろしげ) (1797-1858)

風景画における庶民の人気を北斎と二分した浮世絵の大家。浮世絵風景画の最高傑作《東海道五拾三次之内蒲原 夜之雪》など詩情豊かな作品を数多く手がけました。

北斎同様、その影響力は西洋の印象派の芸術家達にも及び、「広重ブルー」と賞賛されるほど鮮やかな青の色使いは多くの人々の眼を魅了し続けています。

本展では広重直筆の肉筆浮世絵2点を含む22点を紹介。

 展示風景⑤

 

そもそも「浮世絵」とは

浮世とは「憂き世」に由来し、現実の世界という意味です。現実世界にあるものを描いた絵、それが浮世絵です。江戸時代の人々にまつわる様々なものが描かれていることから、当時の世相や風潮などを紐解く一つの手がかりになります。

当時の庶民は浮世絵版画を「絵草子屋」とよばれる店で購入し、鑑賞して楽しみました。諸説ありますが、江戸時代の後期、19世紀半ばには20文(約400円)で販売され、当時のかけそば1杯(16文)程度の値段でした。人気がなくなると、3~6文の安価な値段で販売されました。

 

 

 

■みどころ 

其の壱 歌川国芳作 《木曽街道六十九次之内 守山 達磨大師》

 《木曽街道六十九次之内 守山 達磨大師》は中山道(別名:木曽街道)の宿場町として栄えた守山宿を描いたものです。中国禅宗の祖・達磨大師が盛りそばを何枚も平らげるユーモアあふれる姿が印象的で、駄洒落や言葉遊びが作品に取り入れています。「守山」という地名から連想されるように「盛り」そばが「山」(江戸時代には「売り切れ」を意味する)になるという、江戸っ子ならではの洒落のきいた作品です。

《木曽街道六十九次之内_守山_達磨大師》

 

 

其の弐 葛飾北斎や歌川広重による直筆の肉筆浮世絵を公開

 版画の技法を用いずに絵師が直接絵絹や紙に描いた浮世絵です。

大量生産される浮世絵版画とは違い、一点物の肉筆浮世絵は貴重であり、大名や商人などからの注文を受けて描かれることもありました。

展示風景⑥

 

 

其の参 歌川広重の代表作《東海道五拾三次》シリーズより初摺と後摺を比較展示

初摺は絵師が色や摺り方を直接指示するため、絵師の思い描いた浮世絵版画に仕上がります。

現存数が少なく、現代においては希少価値が高いものです。

後摺は当時販売されていた浮世絵版画のうち特に人気のあったものを再度摺りなおしたものです。

本展では、歌川広重の代表作《東海道五拾三次》シリーズより4点の初摺作品を紹介。

色使いや描かれた景物など、初摺と後摺作品の違いにもぜひご注目ください。

 展示風景⑦

 

 

展示替のご案内

展覧会会期中に作品の展示替を行います。

前期展示:9月30日(土)~ 10月29日(日)

後期展示:10月31日(火)~ 11月26日(日)

※全期間を通して展示する作品もございます。

詳しくは → 作品リスト

 

 


主  催 : 公益財団法人佐川美術館

特別協力 : 朝比奈文庫、光ミュージアム

後  援 : 滋賀県、滋賀県教育委員会、守山市、守山市教育委員会

企画協力 : アートシステム

協  力 : SGホールディングス株式会社、佐川急便株式会社、佐川印刷株式会社