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展覧会

平山郁夫 人の形、仏の姿
終了

2017年11月28日(火)~2018年03月11日(日)

2017年度第3期平山郁夫作品展示のテーマは「人の形、仏の姿」。

原爆の後遺症を患い、仏教に救いの道を求めた平山郁夫。その画業において砂漠の中で歩を進めるラクダなど、シルクロードなど各地の情景を描いた風景画がよく知られていますが、各地を旅する中で現地の人々と様々な交流があり、人物画も数多く手がけています。平山は仏教伝来の道であり、東西文化交流の道であったシルクロードの旅や仏陀の聖跡を巡るインドの旅など、生涯にわたり140回以上の取材旅行を敢行し、現地の人々や数多くの仏の姿を描いてきました。

シルクロードの中でも新彊ウイグル自治区はアジアの内陸部に位置し、気温の変化が激しく、年間の平均降水量はわずかで、乾燥した気候です。そこで暮らす人々の色彩豊かな装飾品や華やかな民族舞踊に魅入られた平山は、陽気で明るくもてなし好きな彼らの気質に好感を覚えたといいます。雑貨屋の老人、鍛冶屋職人、帽子屋の少女など様々な立場の人々をはじめ、眼前の全てを描きとめようと夢中でスケッチを続けます。残された数多くの素描から、はるか西域にやって来た感慨と心の高揚、厳しい自然の中に横たわる西域の現実を可能な限り受け止めようとする平山の姿勢が読み取れます。

また、敦煌莫高窟をはじめ龍門石窟や雲崗石窟など、中国各地に点在する仏教遺跡を訪れ、仏教東漸の道をこの地に見出した平山は、数多くの仏像のスケッチを手がけました。さらに、ユネスコの親善大使を務めていた平山は、アンコール遺跡救済委員会に参加し、第1回アンコール遺跡学術調査団の団長としてカンボジアを訪問。遺跡の調査や取材の際に多くのスケッチを描き、遺跡の現状を記録しました。そして、遺跡群救済のために展覧会を開催し、描かれた数多くのアンコール遺跡の仏像・遺跡群によって文化財保護が広く訴えられました。

本展ではこれらシルクロード各地の人物画をはじめ、中国の石窟寺院やアンコール遺跡の仏像が描かれた作品を中心に展観します。

まずは、日本文化の源流を訪ね、仏の道を辿る旅を続けてきた平山にとって画業の原点となったインドに暮らす人々に取材した作品を紹介。

 

 

展示室1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムガール帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーンにより、亡き后のために約22年の歳月をかけて造営されたタージ・マハル。その前に立つ色鮮やかなサリーに身を包んだ女性が描かれた《タージ・マハル》では愛妃を偲ぶ王が建立した廟と現代の女性というモティーフの対比に平山の透徹した感覚と広い視野がうかがえ、時間的奥行きを感じることができます。

また平山はガンダーラ様式の仏像を数多く描き、《ガンダーラ仏》もその一つに数えられます。ギリシャ・ローマの彫刻を思わせる表現で、波状の頭髪を束ねて、髪を結い、風貌も鼻筋が通り、眼窩がくぼんだヨーロッパ風の顔立ちを示しています。平山の本画作品の多くは紙に描かれますが、本作は珍しく絹の上に描かれ、悠久の歴史を刻む仏像への特別な想いが伝わってきます。

 

 

《ガンダーラ仏》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに人物画や仏像を描いた作品のみならず、仏教の物語、仏伝に取材した平山の初期作品も今回の展示でご覧頂けます。インドで仏伝が繰り広げられた聖跡を訪ね、仏伝に取材した作品を数多く手がけた平山は山に籠もり、食を絶つ苦行を

終えた釈迦の姿を《出山釈迦》で描きました。平山独特の幻想的な表現で描かれ、仏教がもつ遥かな歴史へのロマンを感じることができます。

 

 

展示室6