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展覧会

佐藤忠良 建築でも風景でもない彫刻
終了

2018年12月07日(金)~2019年03月31日(日)

公園や広場、学校、駅、街路、図書館などのパブリックスペースには多くの彫刻作品が設置されています。特定の場所におけるモニュメント、都市計画の一環としての設置など、その用途は様々ですが、前者においては建築物や建造物との親和性や共有性があり、しばしば建築の一部と看做される場合があります。後者においては、公園や街路など全体的な空間の一つとして、言わば風景の一部として捉えることができます。

彫刻作品はそれ自体に芸術性や作家の目指す表現や造形性(個性)によって形作られますが、制作意図や設置される場所によってその意味合いは変化します。例えば《夏》(1975)という作品は、釧路市の幣舞橋の架け替えの際に、市民運動によって彫刻の設置が提案される中で制作されたものです。「道東の四季」というテーマの下、四人の彫刻家(本郷新、柳原義達、佐藤忠良、舟越保武)が春夏秋冬を彫刻作品に表現しました。佐藤は爽やかな風が吹く中で、眩しい陽射しを浴びる健康的な女性像を表現しますが、そこには作家の個性だけを主張するのではなく、テーマ性や設置される場所、あるいは他の3つの作品を意識したであろうことは想像に難くありません。同様の事例として、仙台空港に設置された《翔韻》(1997)も、空港玄関口であるターミナルビル新設に伴い制作されたもので、両腕を広げ大空に飛翔する姿から、空港という場所を意識していることがうかがえます。

これら依頼を受けて制作された作品は、周囲の景観や(風景)や建造物との一体性を重視することで、作家のオリジナリティーは制限されてしまうように感じてしまいますが、いずれの作品も美術館の展示空間や、他所の野外彫刻として設置されることで、本来の制作意図とは関係なく作品自体の芸術性や個性を見ることができるのではないでしょうか。

本展では、日本全国のパブリックスペースに設置された作品を中心に、美術館の展示スペースにおける彫刻作品の見え方を感じ取っていただければ幸いです。

 

《夏》 1975年