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展覧会

佐藤忠良 造形の手本
終了

2021年04月01日(木)~2021年09月05日(日)

佐藤忠良は、彫刻家として活動する以前は画家を志望していたこともあり、彼の素描作品からは卓抜したデッサン力がうかがえます。佐藤は彫刻を制作する傍ら、スケッチブックを片手に日課として普段の生活で心に触れたものを描きました。具象彫刻のモチーフは元来、人物や身近な動物など具体物でしたが、佐藤は樹木や花といった植物、風景など、一見彫刻には結びつかないような自然も対象として描いたのです。

 日々デッサンすることにより、広い視野を持ち、また自然から学ぶ「気付き」を蓄積することで、それを彫刻に持ち込むことができると佐藤は語っています。「近代彫刻家の父」と称されるオーギュスト・ロダンの著書『ロダンの言葉』(高村光太郎訳)の中に、自然観察が創作活動の基本であると説かれており、その本を愛読していた佐藤は生涯にわたってその理念を実践しました。花びらの重なり方、葉脈のラインなど、自然から生まれたすべてのかたちには理由があり、風や雪などの自然現象と闘おうとする姿勢が細部の一つ一つに表れていると佐藤は気付きます。自然の厳しさと尊さを見つめてきた佐藤の素描には、どのモチーフであっても、つつましやかな中に精気と力感が溢れているのです。自然を造形の手本とし、デッサンを通してモチーフを細部まで捉える鋭い観察眼を鍛えたからこそ、人体の生命感と、瑞々しさを宿した彫刻作品を制作できたのではないでしょうか。


 本展では、佐藤が描いた樹木をはじめとした植物のデッサンや彫刻作品を通して、長年にわたる自然観察を通して培ってきた佐藤の観察眼を紹介します。