menu botton

展覧会

佐藤忠良 おしゃべりしない眼
終了

2018年09月22日(土)~2018年12月02日(日)

芸術作品の創造において『眼』の表現はどの程度重要視されるのでしょうか。竜を描いて最後に瞳を描き込むと、その竜が本物になり天に昇ったという中国の故事「画竜点睛」のように、作品において眼とはそこに生命を吹き込む重要な要素だといえます。しかし、それとは対照的に、佐藤の表現する眼は抽象的で曖昧なものが大半です。

 

代表作《帽子・夏》(1972)では、女性の両眼は目深に被る帽子の翳にあり、よく見えません。真下から覗き込んでも左右の眼それぞれの表現は曖昧で、シンプルなラインと膨らみのある造形によってかろうじて眼がそこにあることがわかります。さらに、《たつろう》(1950)や《スイス帽の未菜》(1972)にみる眼の表現は、その部分がくりぬかれています。加えて、素描においても抽象的な眼の表現が認められます。例えば、ブロンズ彫刻を制作するための習作として描かれている《裸婦》(1959)では、眼の部分に帯状のラインが引かれていて、個々の眼の判別はつきません。また、力強い線で構成された《腰かけた女》(1960頃)の眼は左右の表現が異なります。右目は縁取りのみの白目ですが、左目は黒く塗りつぶされています。そこには、遊びの要素が見受けられます。

 

「目は口ほどに物を言う」と言われるように、人間の喜怒哀楽の心情を最も顕著に表す眼の表現をあえて抽象化しているのはなぜでしょう。第3回目となる本展では、佐藤の造形における『眼』に注目し、その制作意図を探ります。

 

 たつろう(1950)