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展覧会

佐藤忠良 物語る表情
終了

2020年07月04日(土)~2020年10月18日(日)

明治時代の文明開化をきっかけに日本のあらゆる文化が西洋化される中、芸術の分野にも西洋化の波がおとずれます。西洋彫刻を学ぶことから出発した日本近代彫刻は、技法のみならず、主題やモチーフにおいても西洋の彫刻を参考とする流れがありました。佐藤忠良も例外ではなく、ブールデルやマイヨールといったロダン以後のフランス近代彫刻からの影響を強く受け、西洋の表現を基礎としながら作品を制作しました。作風の変化が表れたのは、戦争体験がきっかけです。1944年に兵役に召集され満州に渡り、終戦後シベリアで3年間の抑留生活を送った佐藤は、顔の良し悪しや肩書きに関係なく、お互いが心の内をさらけ出すような過酷な状況下で、人間の内面性に美を見出します。シベリアからの帰還後、《群馬の人》(1952年)を皮切りに、「佐藤の首狩り」と称される程、市井の人々をモデルにした頭像作品を数多く発表しました。なかでも《群馬の人》は「日本人の手で初めて日本人の顔をつくった」と高く評価され、西洋近代彫刻の流れをくみながらも、素朴な、どこにでもいる日本人の姿を表現した佐藤の代表作となります。表面的な美ではなく、人間の内面の美しさを追求した佐藤の作品からは、モデルたちの息遣いまでも聞こえてくるかのようです。眼には見えないモデルたちの内面までも造形化し、そのリアリティが鑑賞者の心を掴みました。
本展では佐藤の人間味溢れる作品の数々を、特にその表情にご注目いただきながら、ご鑑賞ください。