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展覧会

今森光彦展 いのちめぐる水のふるさと -写真と切り絵の里山物語-
終了

2021年06月24日(木)~2021年09月05日(日)

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人と自然が共生する「里山」。その中で生み出される豊かな営みを見つめ続けてきた写真家・今森光彦さん。滋賀・湖西地域の仰木地区の一画、琵琶湖を望む田園風景の中にアトリエを構え、四季折々に移り変わる田んぼや里山に集まる生き物を撮り続けてきました。また、蝶や鳥、植物をモチーフに、精緻で生き生きとした作品をつくる切り絵作家としても知られており、深い洞察力により、たった一本のはさみから生み出される作品は、生き物の力強さや植物の鮮やかさが表現されています。

本展では、里山に暮らす今森さんのライフスタイルの紹介をおりまぜながら、写真と切り絵で里山の魅力に迫ります。さらに、「水」をテーマに、琵琶湖を中心に滋賀を取り巻く琵琶湖水系に着目し、そこにまつわる生き物や暮らしを合わせて紹介します。自然とそこに暮らす人々がつながる美しい里山の景色と、身近な自然と関わりながら暮らす喜びや魅力をお楽しみください。


 注目ポイント① 

 日本の原風景・里山を通して見える、人間と自然が共存してきた世界 


佐川美術館から琵琶湖をはさんだ対岸、滋賀・湖西地域の仰木地区の"里山"が、今森さんの活動拠点です。まさに今森さんの代名詞ともいえる場所、里山。ここにはあらゆる生き物が生息し、そして昔ながらの人間の暮らしがあります。

そもそも里山とは、原生的な自然と都市との中間に位置し、集落や二次林、農地、ため池などで構成される場所のことで、国土の約4割を占めていると言われています。里山は、長い時間をかけて人々が自然と寄り添いながら作りあげてきた場所で、もともとある自然に人工的に手を加えながら、人々とその土地の生態系とが共存してきました。どこか懐かしさを覚えたり、都会の喧騒から離れて安らぎを求める場所として想像する方も多いかもしれません。

今森さんは、里山を長年自身の目で見つめ、そこから見える真実を写真に残してきました。今森さんの目で捉えた里山が見せる四季折々の表情を、作品を通してご覧ください。

《大津市仰木地区に広がる棚田》


 注目ポイント② 

 自然と寄り添う今森さんのライフスタイル 


今森さんのアトリエの庭には、現在70種類の蝶が生息しています。"オーレリアンの庭"と名付けられた庭は、今森さん流の里山への愛情が詰まった場所です。オーレリアンとは、ラテン語で「蝶を愛する人」のこと。ロケーションの生態系を最優先に守りながら、蝶をはじめとする昆虫たちの食草を考えて庭を植栽したそうです。

《キアゲハ》また、オーレリアンの庭では、四季のごちそうとして様々な食物が収穫されます。今森さん流の旬の味覚の楽しみ方は、見ているこちら側も思わず日常に取り入れてみたくなるものばかりです。この章では、昆虫や植物といった四季折々のオーレリアンの庭の住人と、今森さん流里山ライフスタイルをご紹介します。

《カリン茶》


 注目ポイント③ 

 1本のはさみから生まれる切り絵の数々 


切り絵作家としても知られている今森さんは、 蝶や鳥、植物をモチーフに1本のはさみで作品を制作します。作品に表現されるモチーフはどれも細やかに表現されており、今にも動き出しそうです。今森さんが常日頃よりいかに対象を観察し、真実を見つめ続けているのか、作品から伝わってきます。

《ヤツガシラとジギタリス》


 注目ポイント④ 

 いのちがめぐる"水"の大切さ 


母なる湖・琵琶湖。滋賀県は、琵琶湖を中心に四方が山に囲まれた盆地を有しています。山に降り注いだ水は、川となり琵琶湖に注がれます。そして瀬田川から淀川を経て大阪湾へと流れます。近畿の水がめとしての役割を担う琵琶湖ですが、その水の流れの中であらゆる生命が産まれ、生き抜き、一生を終え、また新たな生命へとサイクルを繰り返していきます。人間もその一つであり、はるか昔より水とともに日々の生活を営んできました。その歴史の中でありとあらゆる文化が水とともに根付き、様々な生き物と共生し続けてきたのです。

《ヨシの芽吹き》


漁師の姿、琵琶湖のランドマークともいえるヨシの群生、琵琶湖固有種の生き物たち・・・琵琶湖を中心とした水系は、いろいろなドラマを私たちに見せてくれます。今森さんがファインダー越しに捉えた自然の姿からは、きっと何かの気付きを得るはずです。

普段気が付かないこと、改めてその大切さを知ること。

いのちめぐる水のふるさと、琵琶湖水系で繰り広げられるドラマについて、作品全体を通して感じとっていただければ幸いです。

《朝焼けの船着き場》 


また、今森さんが活動を続ける里山エリアの生き物生息地を紹介した、里山の生き物立体MAPも登場します!どんな生き物がいるのか、発見してみてください。

写真・切り絵すべて©Mitsuhiko Imamori