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展覧会

樂直入展 守破離の彼方
終了

2023年03月16日(木)~2023年09月18日(月)

桃山時代、茶道の祖・千利休の侘茶の心を汲み、樂家の祖・長次郎が一碗の茶の湯茶碗を生み出したのが、樂焼の始まりです。以来、長次郎を初代とする樂家は450年にわたりその伝統を現在に伝えてきました。


樂家の十五代樂吉左衞門は、2019年に代を譲り樂直入に改名しました。伝統の規範性に根ざした精神とその規範を打ち破り激しい創造性を開示しつつ変貌する直入作品の世界は、まさに「守破離」の精神そのものです。


水面下の非日常に身を委ね、現在もなお、認識すなわち言語を超えようと挑戦しつづけている直入作品の魅力を感じていただければ幸いです。


樂直入自らが設計の創案を行った樂吉左衞門館の6つの展示室には、「守破離」というテーマに基づいて象徴的な展示室名がつけられています。それぞれの展示室に展示されている作品との関係性とは・・・ 本展は、開館当初(2007年)の設計創案に基づいた展示をしています。

【守破離の彼方】

茶道具のうちの3点(茶碗、茶入、水指)を組んで展示しています。直入ならではの焼貫という技法でつくられた作品を展示空間にバランスよく配置することで、調和のとれた一つの世界観を構成しています。


【昼の航海】

光が降りそそぐ明るい昼の海を漂う舟を想起させる、腰の丸い形状が特徴的な沓形(楕円状に歪みのある形)の作品。海の青をイメージさせる呉須(コバルト)の釉景が美しい一碗です。
焼貫黒樂茶碗 江上阻風雨 2003


【夜の航海】

暗闇に浮かび上がる夜の海を漂う舟を想起させる、銘に「舟」の一字がつく沓形の作品。見込み(茶碗の内側)には黒の釉薬がかけられており、口造りが波のような動きを伴い個性的です。
焼貫黒樂茶碗 篠舟 2002


【破の守】

(手のひら)に馴染む穏やかな姿の温かな趣の赤樂茶碗は、伝統的な規範性の高い作品。樂茶碗を代表する赤樂茶碗の赤は土の色で、黒っぽい景色になっているのは窯変によるものです。
赤樂茶碗 桃実 2012

抹茶茶碗らしい形状の黒樂茶碗は、伝統的な規範性の高い作品。若草色の緑釉がモダンな印象を醸し出しています。黒の釉薬は京都市内を流れる鴨川から採取された加茂川石を使用しています。

黒樂茶碗 春江 2001

【破の破】

伝統的な規範を打ち破った斬新な造形の作品。焼貫黒樂茶碗(胴や口縁に激しいの跡が見られ、焼き貫くという名の通り、かなりの高温で焼き締めた作品)は、直入ならではの表現です。

焼貫黒樂茶碗 氣昏雨已過突兀山復出 2006


【離】

これまでの固定化された茶入の様式を打ち破った作品。焼貫茶碗は、これまでの茶碗の概念を打ち破ったものでしたが、「塊」をイメージしたという焼貫茶入はさらに革新性に満ちています。

焼貫茶入 迦楼羅 2009



*守破離 ― 千利休の教えをまとめた『利休道歌』にある「規矩作法守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」から来た言葉。「守」とは、伝統を守り継承する精神。「破」とは、伝統様式を打破し発展させる段階。「離」とは、そこから新しいものを創造すること。しかしながら、大事なことは「本を忘るな」=「基本を忘れてはならない」。