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展覧会

佐藤忠良 静と動
開催中

2024年03月30日(土)~2024年06月09日(日)

一個の動かぬ彫刻に、文学や音楽に匹敵する時間性を与えようと試みれば、彫刻にはできるだけ、おしゃべりをさせない方がいいというのが私の彫刻に対する考え方なものだから、私の彫刻が比較的動きの少ないのもそのためである。(「自作を語る」北海道新聞、1983年)

そう語る佐藤忠良の彫刻は、動きの少ないポーズが特徴です。主題やモデルによって例外的に動きの大きなポーズをとった作品もありますが、大きな動きの中にも行き過ぎない上品さが感じられます。本展では、展示室中央の壁を挟んで手前側に動きの小さいポーズをとった作品、奥側に比較的動きの大きいポーズをとった作品を展示します。両者を対比して見ると、作者の卓越した「静と動」のバランス感覚がうかがえます。

また、彫刻作品と共に、制作の準備段階や基礎的な訓練として手掛けたスケッチも展示しています。佐藤が作品に与えようと試みた時間性を追求する姿勢は、日常的に描いていた植物のスケッチによく表れています。たとえば花のスケッチには、蕾が膨らんで花が咲くまでの一連の様子が丁寧に描かれており、花の一時の姿を描き留めるのではなく、積み重ねた時間まで捉えようとする意欲がうかがえます。作者が彫刻のモデルに、家族や弟子の彫刻家・笹戸千津子など共に時を重ねてきた身近な人々を選ぶことが多かったのも、時間性への追求が一因と言えるでしょう。本展を通じて、佐藤作品を特徴付ける「静と動」の表現と、作者が彫刻に与えようと試みた時間性を感じ取っていただけましたら幸いです。