平山郁夫 玄奘三蔵の足跡を訪ねて
2024年12月19日(木)~2025年02月24日(月)
平山郁夫が、日本画家としての自信を持つ契機となった作品のテーマは仏教でした。
僧が異国へ経典を求め、艱難辛苦の旅を経て戻ってきた場面を描いた《仏教伝来》(佐久市立近代美術館蔵)が院展において評価を受けたことから、画業をつき進める道筋が開かれていったといいます。
この僧侶のモデルとなった人物が、中国唐代に実在した玄奘三蔵です。玄奘は、中国に伝えられていない仏典を得るため、目的達成までは引き返さない意志を込めた「不東」の精神を掲げ、遥か異国の天竺まで旅をしました。平山は、玄奘をモデルにした幻想的な仏教画を描いたことをきっかけに、馴染みのあった仏教をテーマとした作品を手がけるようになります。
その後1960年代に入り、海外旅行が自由化されると、仏教が伝えられてきた道・シルクロードへ取材に訪れるようになります。それは、日本に伝わった仏教文化を探ると共に玄奘三蔵の通った道を辿る旅でもありました。
そして1976年、薬師寺元管主の高田好胤師から絵画の奉納依頼を受け、薬師寺玄奘三蔵院壁画に取り組み始めます。平山は、この仕事を自身の取り組んできたシルクロードシリーズの集大成と捉え、かつ自身の辛い時期を救ってくれた恩人と感じていた玄奘への恩返しとして手掛けたといいます。
20年以上にも及ぶ長い取材旅行と検討の末、2000年12月31日に最後の筆が入り、玄奘の旅を全7場面に分けて描いた壁画「大唐西域壁画」は完成しました。
本展では「大唐西域壁画」完成から7年後に同じ構図、モチーフで描いた「大唐西域画」を軸に、玄奘の旅の追体験を試みた画家の見てきた世界をご紹介します。