シルクロードを生涯に亘って百数十回旅し、現地でのスケッチを欠かさなかった平山郁夫にとって、旅は画業そのものでした。

旅から多くのことを学び、吸収していきました。中でも、生涯のライフワークとなった取材旅行へ繋がるきっかけとなったのが、1966年に東京藝術大学遺跡調査隊の一員として派遣されたトルコ・カッパドキアでの体験であったといいます。この地で平山は、荒涼とした大地に広がる風景がわずかな光線の違いで変化していくことに気付かされます。単調だと思っていた景色が刻刻と移ろいゆく様に、現地の人間の営みや歴史の移ろいが重なって感じられた平山は、実体験から得た実感により作品に深みが与えられることを知ります。もとより仏教伝来の道をその目で確かめたいという思いがあった平山にとって、この時の体験がシルクロードへの旅を決行する後押しとなりました。

本展では、取材旅行へ赴くきっかけとなった旅先をはじめ、平山が世界各地を訪れて描いた作品を展覧します。作品を通して、平山の旅の視点を追体験いただければ幸いです。